浄化槽の保守点検は、浄化槽法で義務づけられており、
環境保全や公衆衛生の面からも施設管理者が果たすべき責務と言えます。
本記事では、浄化槽の保守点検の内容や費用、
さらに維持管理に欠かせない清掃・汲み取りの知識までをわかりやすく解説します。
施設の排水トラブル防止や浄化槽の正しい維持管理のためにも是非ご一読ください。

1.浄化槽の保守点検とは?、内容・項目を今一度確認しよう

浄化槽の保守点検は、浄化槽の機能を維持するために不可欠な作業です。
浄化槽内の汚泥の状況、装置や機器の適切な動作や破損の有無を確認し、
必要に応じて清掃や微生物の調整、修理を行います。

この保守点検は、浄化槽法に基づいて管理者(設置者)に義務付けられています。
また実施者は、市区町村が認可した業者や、国家資格を持つ浄化槽管理士に限られます。

保守点検の頻度は、浄化槽の種類、処理方式、設置規模、利用状況などによって異なります。
管理者は、施設に設置されている浄化槽に合わせて、適切にスケジュール管理をしていく必要があります。

それでは、具体的な浄化槽の保守点検の内容・項目を確認していきましょう。
浄化槽は、①分離槽②ばっ気槽③沈殿槽④消毒槽⑤付帯機器・配管から構成されています。
点検は各槽と機器ごとに行い、清掃や修理の必要性・時期などを検討していきます。

1-1.分離槽の点検

分離槽は一次処理槽とも呼ばれ、汚水が最初に流れる槽です。
嫌気性微生物(酸素のないところで働く微生物)が汚水中の有機物を分解し、
汚泥として下層に沈殿させる役目を果たします。

ここでは、汚泥の堆積状況、汚泥に伴うガスや臭気、害虫の発生状況を確認し、
清掃・汲み取りが必要な場合の時期を判断します。

また、ろ材の浮上・流出といった異常の有無を確認し、修繕の必要性を検討します。

1-2.ばっ気槽の点検

ばっ気槽は、二次処理槽とも呼ばれる槽です。
酸素を好む好気性微生物が働き、分離槽で処理しきれなかった有機物を分解する役割を果たします。

ここでは、微生物を活性化させるためのばっ気攪拌(酸素供給の状況)、洗剤による泡の発生状況、
浄化槽の稼働に影響を及ぼしかねない生物膜や浮遊汚泥等の確認を行います。

1-3.沈澱槽の点検

沈澱槽は、ばっ気槽で汚水を浄化した微生物の塊を沈殿させる槽です。
きれいになった上澄み水は、次の消毒槽に送られます。

ここでは、汚泥の堆積状況、害虫の発生状況、上澄み水の越流の均一性などを調べます。
沈澱槽で水と汚泥がうまく分離されていない場合には、分離槽やばっ気槽の微生物が少ない恐れがあります。
微生物が活性化するよう、種菌(栄養剤)を入れる等の処置を施します。

1-4.消毒槽の点検

消毒槽は、上澄み水を放流する前に消毒剤で消毒する槽です。

ここでも汚泥の堆積状況を確認します。
また、消毒剤の状況や適否をチェックし、必要に応じて補充します。

1-5.付帯機器・配管の点検

浄化槽に空気を送り込むブロワ、放流ポンプなどの稼働状況を確認します。
また、マンホール蓋や蓋枠、浄化槽の流入・放流管の破損・劣化・腐食等の有無、
周辺の臭気・異音の有無等のチェックも行います。

2.ちなみに、浄化槽の「保守点検」と「法定検査」はどう違う?

繰り返しになりますが、保守点検は浄化槽の機能を維持する目的で行います。
一方、法定検査は浄化槽の機能に加え、
「浄化槽の維持管理(保守点検・清掃)が適正に行われているか」を確認するものです。

この法定検査は、知事指定の第三者である検査機関のもと、年1回の受検が浄化槽法で義務付けられています。

3.浄化槽の保守点検をしないとどうなる?


汚泥の蓄積・放置による異臭や害虫の発生、汚水の流出・逆流、
ブロワの不備による異音の発生等の事態が発生する可能性があります。

周辺環境に少なからずの影響を与えるだけでなく、
最悪の場合、行政指導や罰金の対象となってしまうことは覚えておきましょう。

4.浄化槽の保守点検の費用は、どう決まる?

一般に保守点検の費用は、1回1〜2万円前後と言われています。
ただ、この価格相場は一般住宅に限ってのことです。
浄化槽の大きさは「人槽」と呼ばれ、設置する建物の延床面積や用途、汚水量によって異なります。
一般住宅では5人槽〜10人槽が一般的であるのに対して、
ビル・マンション・商業施設・工場等では、50人槽〜1000人槽クラスとなることもあります。
浄化槽が大きくなればなるほど、保守点検に必要な人員・時間もかかります。

大きさに応じて、費用も倍になるわけではありません。
ただ、ビル・マンション・商業施設・工場等での保守点検費用は、個別見積もりがマストとなります。

5.浄化槽の保守点検時には、清掃・汲み取りもセットで行おう

浄化槽内の洗浄および溜まった汚泥の吸引=「清掃・汲み取り」を同日に実施することで、
より効率的に浄化槽の機能を維持することができます。
時間だけでなく、費用面の削減ももたらしてくれます。

保守点検同様、清掃も市区町村の許認可および汚泥の処理資格を保有する業者でなければ行えません。
この点もしっかり留意しておきましょう。

こちらの記事では、「浄化槽の修理」「浄化槽の交換」に関してまとめています。
気になる方は是非ご一読ください。

タカヤマでは、排水処理に関わる総合的なメンテナンスサービスを展開。公式ページはこちら

タカヤマ【排水処理施設・設備】
メンテナンスエンジニアリング
こちらからどうぞ